チェブレキにまつわる真相

ロシアに「チェブレキ」*1という、いわゆるファストフードがある。
ウチの近所にちょっと値段は高めだがチーズたっぷりのをアツアツで売ってくれる店があるのを知ってから、けっこう頻繁におやつ代わりに買って食べるようになり、何とはなくチェブレキについて調べてみようなんて思いついたところが、目からウロコ。


チェブレキ、て・・・


チィ・ボレキのことだったんかー!*2


さっそくこの発見を父ちゃんに報告すると、父ちゃんも「へーそら知らんかった」と意外だった様子。
しかし後日わたしたちをさらに驚かせたこと、それは「チェブレキ」というロシア語を聞いたトルコ人の耳がそのことばをすぐさま違和感なく「チィ・ボレキ」に変換して理解しているという事実なのだった。
父ちゃんが同僚トルコ人に(おそらくちょっぴり得意気に)チェブレキの正体を明かしてみたところ、「え。だってチィ・ボレキて言ってんじゃん?」的なリアクションだったらしい。(ぁぃゃ、チェブレキて言ってんですがねw)


さて、ウィキペディアに目を通してみると、このチェブレキあるいはチィ・ボレキ、もともとはクリミア・タタールの民族料理だったとのこと。
基本レシピ的には、羊の挽肉にたまねぎのみじんきりとスパイスを加えた具を小麦粉を練って薄く伸ばした生地に挟み込み半円状にして油で揚げたものである。*3
にもかかわらず、トルコ語で「チィ・ボレキ(生(なま)のボレキ)」とはコレ如何に??と思わずにはいられないところなわけであるが、このへんの謎は、クリミア・タタール語でいうところの「チュベレク」がトルコに伝わりトルコ語化する中で空耳的に「チィ・ボレキ」というふうに定着してしまったにすぎない、みたいなことがトルコ語版では説明されていて、ちょっと納得。
「中身の挽肉を生のまま詰めて揚げること」からこの名が付いたという日本語版で紹介されている由来話は、たしかに一説としてはありえるのだろうが、なんとなく後からこじつけちゃいました〜(エヘ)みたいな感じがする、というか。


それと、もひとつついでに個人的にチェブレキの項で気になってしまったのが、ロシア語版で見かけた「クリミア・タタール人およびその他の民族(カライム人、クリムチャク人、クリミア・ギリシア人)の料理と考えられる」のカッコ部分。
さらにリンクをたどって行ってみると、カライム人、クリムチャク人というのはキプチャク系の(クリミア・タタール語に近い)テュルク語を話すユダヤ教徒で、イスタンブルカラキョイ*4はカライム人*5の住む地区という意味でそういう地名になったとも言われている、とか興味深かったりして。。


う〜む、チェブレキひとつ取っても奥が深くて困るw


とゆわけで、ここではボレキにまで足突っ込むのはやめとこ。

*1:単数形:Чебурек(チェブレク)、複数形:Чебуреки(チェブレキ、「キ」にアクセント)。ふつう複数形で言う気がするので、ここでもそのように。

*2:Çiğ börek、カタカナとしては「ボレク」より「ボレキ」のほうが原音に近いかなーと思ったのでそのように表記した。トルコでもおなじみの(少なくともよく耳にはする)料理だが、ふりかえってみると、トルコぢゃアタシ食べたことなかったw

*3:ちなみにわたしが好んで食べているのはもっぱらチーズを具としたチェブレキで、肉入りはここでも食べたことがない。

*4:Karaköy、イスタンブルのガラタ塔からガラタ橋に向かって下りてきたあたりのエリア。

*5:カライムの「イム」はヘブライ語の複数形語尾だそうで、もとは「カラの人」であるところから。「カラ」(QaRa)はアラビア語の「読む」と同じ語幹からきているとのこと。たとえば「クルアーン(読まれるもの)」(QuR'an)。